空知地方には、北から南へと貫く長大な用水路が存在する。それが北海幹線用水路。同地方の農業を支えるこの水路は、着工までに紆余曲折があったほか、工事も難工事続きだったという。今回は北海道遺産にも選定されているこの用水路の歴史を紹介する。用水路は空知中央部の赤平市を起点に、砂川市、奈井江町、美唄市、三笠市、岩見沢市、北村、栗沢町、南幌町へと流れる。その長さは80kmに及び、農業用水路としては日本一を誇る。受益面積は26000haに達し、まさに広大な空知の水田を今も潤している。
用水路のルートには、奈井江川、茶志内川、栗沢の加茂川、美唄川などいくつもの河川をまたがなければならない。そこで水路橋を設けたり、逆サイフォンを設けて川の下を抜ける工法を採り入れたりした。本線、支線のなかには鉄道を横断するもの、山腹をトンネルで通過するものなどがあるほか、工事中の洪水や出水、土地買収などのさまざまな困難が伴った。ときには、水路のルートなどの問題で意見の相違が生じ、農業者騒動まで事態が発展して犠牲者も出たという。
現在も農家にとって不可欠な用水路だが、市街地、住宅地の側を流れる場所によっては橋を迂回しなければならなかったり、水勢が早いために危険な部分もある。そのため市街地では、用水路の上に蓋をして公園・親水広場などに活用するといった工夫がなされている。豊かな穀倉地帯を支えるこの用水路について最近は市民の関心も高まっており、周辺地域の植樹活動や憩いの場造りも行われるようになった。資料提供:北海道遺産構想推進協議会、北海土地改良区。
|