北海道医療新聞社

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週刊:介護新聞

2020年(令和2年)1月1日付

現場に広がる「就労」 利用者も社会の一員に

 北海道内の介護現場でも利用者が社会参加し、地域とつながりを持ちながら役割や生きがいを感じられる仕掛けとして、「就労」に着目した取り組みが広がりを見せている。利用者が菓子作りから販売まで担う地域密着型通所介護「おしゃべりサロン」(恵庭市)、古い着物を仕入れ反物にする手仕事で対価を得る「デイサービスセンター雪の華」(江別市)はいずれも事業所の魅力アップ、利用者増に結び付いている点も注目だ。十勝産の羊毛を活用したものづくりプロジェクトを展開する認知症グループホーム「ケアサポートワンズホーム」(帯広市)は入居者が製作過程を担い、他事業所も巻き込み始めている。「利用者も社会の一員として生き生きと暮らしてほしい」。そんな思いの込められた、それぞれの現場から新たな潮流をレポートする。


恵庭・おしゃべりサロン、菓子作り・販売通し生きがい創出

 毎月第2、4木曜日は恵庭市庁舎での焼き菓子販売の日。売っているのは同市の地域密着型通所介護「おしゃべりサロン」利用者が作る「おからパウンドケーキ」。利用者が売り子として販売、「程良い甘さでヘルシー」と毎回100個を完売させるほど好評だ。この取り組みは2019年7月から「役割を持てるリハを」との思いから始めたもので、販売収益を温泉旅行で利用者に還元。旅行の思い出から「また頑張って温泉に行きたいね」とおしゃべりに花を咲かせるなど、仕事を通じたリハが利用者の生きがいにつながっている。


帯広・GHワンズホーム 羊毛ほぐしプロジェクト展開

 十勝になじみの深い羊をツールに、利用者を「受け身」の存在から「生産者」へ―。そんな熱い思いの込められたプロジェクトが、帯広市内にある認知症グループホーム「ケアサポートワンズホーム」(運営主体・ケアサポートふる郷)で展開されている。羊毛を使った小物等を製作・販売している個人事業主と提携し、入居者が製作過程の羊毛ほぐしを手伝い、対価を受け取る仕組みが始まり2年が過ぎた。積み立てたささやかな工賃で、目標とする「みんなで外食」も見えてきた。


江別・デイサービスセンター雪の華 社会参加、仕事で稼働率90%超

 江別市の「デイサービスセンター雪の華」は利用者による「社会参加」と「仕事」で稼働率90%超、2019年10月には94.6%を達成した。「集団レクを好まない高齢者が通いたがるデイ」が差別化となり、稼働率アップの要因としてかなりのウエイトを占める。同デイの介護職は要介護になってもできることを見つけ、利用者自らの意思で社会参加や仕事ができるように支援するのが腕の見せどころだ。


沼田・暮らしの安心センター 「開かれた施設」として定着

 沼田町が2017年10月にオープンした地域密着多機能型総合センター「暮らしの安心センター」はハード、ソフト共に住民に「開かれた」施設として機能を発揮している。中でもデイサービスは一般町民と同じスペースでの機能訓練、センター内カフェでの食事など、デイ専用スペースにとどまらない利用がこれまでの「デイサービス」のイメージを刷新し、利用者数増加につながっている。


●介護予防でも「就労」キーワード 推進方策検討会報告書で提言
●新たな介護施設経営セミナー 求められるICT活用 さっぽろイノベーションラボ部会
●21年度制度見直しに関する意見(素案)抜粋 社保審介護保険部会


【連載】●介護アロマの第一歩 介護の現場でどう生かせるか=46
     北海道アロマケア協会代表理事 宮崎寿子氏
    ●幸せの「シカケ学」人や地域をエンパワーする、まちの仕掛けデザイン=休
     札幌市立大デザイン学部 片山めぐみ講師
    ●医療・介護をつなぐキーパーソン「同行事務員」=8
     医療法人新産健会 林達朗在宅医療事業部主任

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