ヴェネツィア

大運河(カナル・グランデ)


 177の運河と400の橋からなる街ヴェネツィアは、他の都市では邪魔なほど多くあるバイクや車は全く見かけません。ここでの交通手段は船しかないからです。一般的な交通手段はヴァポレットと呼ばれる陸上で言えば路線バスみたいなもの。タクシーは運転手付のモーターボートと思えば良く料金も高めのようです。
 街の入り口であるサンタルチア駅の前には、街の中心へと続く大運河(カナル・グランデ)が流れています。いつもは多くの舟が行き交う場所ですが、ちょうどこの日はゴンドラのレースが行われ、川辺や橋の上は大勢の見物客で賑わっていました。
  ベネツィアの街は意外にこぢんまりとしています。街の入り口サンタルチアの駅周辺も歩いて行ける場所に美術館など見所もたくさんあります。路地の要所には案内板も完備していますから、あちこち観光しながら、間違ってどんな路地に入り込んでも、橋(運河)さえ渡らなければちゃんともとに戻れるので迷子の心配もありません。


リアルト橋(Ponte di Rialto)


 街の中心を流れる大運河(カナル・グランデ)には3つの橋しかありません。駅前のスカルツィ橋、アカデミア美術館前のアカデミア橋、そしてリアルト橋(Ponte di Rialto)です。リアルト橋はもともと木の橋でしたが、1444年にフェラーラ総督の行進があった時に見物客の重みで崩壊し、現在の橋に造り変えられたそうです。白い大理石でできた太鼓橋の設計は建設技術者アントニオ・ダ・ポンテによるもので、長さ48メートル、幅22メートル、中央の高さは7.5メートルの大きさがあり豪華で贅沢に見え観光ポイントの一つともなっています。
 橋の内部にはおみやげを売る小さな店が並んでいて見て歩くだけでも楽しめ、またヨーロッパの橋には珍しく運河を見晴らす欄干と花瓶型の手摺が付いていて、橋の中央部は前後を開放した憩い場となっています。なかなか心にくい設計ではありませんか。


ゴンドラ


 ヴェネツィアのゴンドラは左右が非対称になっていて、船尾に乗った漕ぎ手(ゴンドリューレ)が、片足を右舷にかけ船を漕ぐことによって平衡を保っているそうです。そのため、人並に漕げるには相当の熟練が必要らしいです。底は平たくかなり浅い運河でも進むことが出来るようになっていますが、現在は実用的な足ではなく、ただ観光客相手のものだそうです。
 船上ではカンツォーネのサービスもあり、団体で行くと数隻に1隻の割合でアコーディオン奏者とボーカリストが乗ります。本物のボーカリストは数人しかいないらしく、この日はアルバイトの音楽大学の学生が歌っていました。ボクが聞き覚えのある歌は「帰れソレントへ」と「オ・ソレ・ミオ」くらいでした。そんな歌を聞きながら、ゴンドラは狭い水路を進んで行きます。
 運河沿いの路地を歩く人や、付近のアパートに住んでいる人々は、こちらを見て手を振ったりしてくれます。こちらも愛想笑いをしながら手を振ったりしますが、何となく檻の中のクマさんの様な気分でした。


サンマルコ広場(Piazzetta San Marco)


 サンマルコ寺院の前に造られたサンマルコ広場は今でもヴェネツィアの中心地となっています。 ナポレオンが「世界で最も美しい客間」と讃えたという広場ですが、現在では人と鳩で埋め尽くされ、あちこちで鳩のエサまで売っています。これなら「鳩の広場」と別名を付けても良いくらいです。しかし、もっと景観を害しているのが地面を埋め尽くすようなタバコの吸殻。現地のガイドさんもタバコを吸っていましたが、観光地に灰皿などめったにありません。宗教がらタバコも自然に帰すために地面に捨てるのだそうですが、なんとなく我田引水的な理屈のように思えます。とにかく、「世界で最も美しい客間」がタバコと鳩の糞だらけでは、ナポレオンも悲しんでいるのでは?
 広場は今でもヴェネツィアの中心地となっています。新旧の政庁舎、鐘楼、時計台、そしてサンマルコ寺院に囲まれ、中でも1720年に開業しカサノヴァやゲーテなど世界の文化人に愛されたカフェ「フローリアン」は有名です。


サンマルコ広場(Piazzetta San Marco) 鐘楼


  本日のガイドさんは、その名も「マルコ」さん(自称で本名かどうかは不明)。一般的なイタリア男性らしく?女性には年齢を問わずとても優しく対応してくれました。
 高さ約97メートルの大鐘楼(エレベーターで頂上まで登れる)が広場のシンボルとなっていますが、その向かいにある大きな時計塔もお忘れなく。よーく見ているとムーア人の像が槌を振って鐘を突いて時を知らせてくれます。


サンマルコ寺院(Basilica di San Marco)


  ヴェネツィアの守護聖人である聖マルコをまつるために建てられたサン・マルコ寺院はビザンティン建築の代表作といわれています。9世紀に創建されたヴェネツィア共和国太守の礼拝堂でしたが一度消失し、現在の建物は11世紀に作られ、後の改築でゴシック、ロマネスク、ルネサンスのさまざまな建築様式がもとのビザンティン様式と入り交じり、現在の姿になったそうです。
 入り口の階段を登ると小さいながら「宝物館」があります。天井に描かれたモザイク画もなかなかのものです。


ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)


 ヴェネツィア共和国太守の政庁であり、裁判所も兼ねていたのがドゥカーレ宮殿です。内部には評議員達の数々の間、会議室などがあり、ヴェネツィア派画家達の絵画が多く展示されています。世界最大の油絵と言われているティントレットの「天国」はさすがに有名なだけの迫力があります。
 牢獄以上にため息が出たのが、さすがの「黄金の寺院」も、ずらりと柱が並ぶゴシック建築の最高峰「ドゥカーレ宮殿」も、洪水には勝てず床は汚れ歪んでいることでした・・・


ため息橋


 ご存じのようにこの宮殿はあの「ため息橋」で牢獄と結ばれています。この橋を渡った囚人達は二度と外に戻ることはなかったそうです。悲しいため息だったのですね。
 橋の向こうにある牢獄は、狭く薄暗くいまにもネズミでも出てきそうな洞穴で「さすが牢獄」としか表現しようがありません。ボクとしてはのぞいただけでもため息が出そうでした。


ムラノ工房(MURANO)


 数多くあるヴェネチィアン・グラスの店で、入り口付近は工房になっており客の目の前でグラス制作を実演してくれます。 入り口の工房を過ぎて置くに行くとセットで数万円という一般的なグラスが所狭しと並んでいます。よく見かけるヴェネチィアン・グラスのセットなどはここで購入できます。購入時にはリラよりも日本円で買った方が安くあがりました(両替手数料を考えても得というのは何となく変な話ですが)。多くの場合、ここの部屋で買い物を済ませた方が無難でしょう。


ムラノ工房 ため息部屋


 ヴェネチアのドゥカーレ宮殿と牢獄とを結ぶ「ため息橋」は有名ですが、その近くに数多くあるヴェネチィアン・グラスの店ではなんと「ため息部屋」があります。もしもあなたが店員の話に付き合って、「もう少し大きめで、見た目も良い物を」なんて言い出すと、奥の部屋へ連れて行かれます。そこは1脚数万円のグラスが並ぶ部屋。この部屋で「グラスの赤みがイマイチねぇ」、なんてこと言い出すといよいよ店員曰く「ため息部屋」へ連れていかれます。
 「ため息部屋」では1脚数十万円のグラスが贅沢なスペースを占有し、ゆったりと並んでいます。飛行機でいえばエコノミーからビジネス、そしてファーストクラスへと進んで行くような感じでしょうか。ため息部屋はもちろん空調も照明も違います。グラスの色合いなどを、安いグラスと同じ部屋で比較したいのですがそれはタブーのようです。たぶん、誰がみても気に入るようなグラスばかりなのですが、値段を聞くたびにため息がでます。そうか、だから「ため息部屋」か、なーんて感心しちゃいました。


ソフィテル ホテル(Hotel Sofitel Venezia)


場所はサンタルチア駅の近くで、ロケーションとしてはまずまず。一見アパートかマンションのような外観をしていますが、一応4つ星のホテルです。
 部屋はほどほどの広さ、調度品もモダン・アンティーク調(何だが変な表現だけど、こうとしか表現できません・・・)となっています。家具、調度品は何とか許すとしても、唯一残念だったのは窓からの景観。だいたい窓自体が雨戸のようなもので、しかもほんの少ししか開かず圧迫感があります。まるで日本のラブホテルみたいなもので、もうすこし何とかなると思うのですが・・・


ソフィテル ホテル(Hotel Sofitel Venezia) レストラン


 この日の夕食はホテルのレストラン。パスタやビザは満足する味のイタリアですが、全般に肉料理はイマイチの印象です(一流とか高級といわれているレストランで食事したわけではないので仕方ないかもしれませんが・・・)。この時はリゾットに鶏肉のグリルでしたが、期待を裏切って?どちらも満足できる味でした。ただ年配者でも少し物足りない量だったのが残念といえば残念。





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