薄野

• ススキの野

  満月。

  風がそよぐ。

• 薄野（夜）

  ネオン街。

  ビルの谷間に満月。

  行き交う人々。

  老若男女が入り乱れている。

• パブ（夜）

  にぎやかな店内。

  若い男女の姿。

  ウェイターも忙しげに動き回る。

  カウンターに、岡田良(22)、ちびちびやっている。

  声

  「空いてる？」

  良、振り返る。

  川崎圭（１８）、派手な恰好で立っている。

  良、頷く。

  圭、座る。

  良、酒を飲む。

  圭

  「大人しいのね」

  良、無視して飲む。

  圭

  「彼女に振られた？」

  良、飲む手が止まり、圭を見る。

  圭

  「失恋？」

  良、飲む。

  圭

  「やけ酒？」

  良

  「何か、用？」

  圭

  「私と付き合わない？」

  良、圭の顔を見る。

  圭

  「私も振られちゃったの。振られた同志、遊ぼうよ」

  良、生唾を飲む。

• 同・外（夜）

  人通りが絶えない。

  圭

  「何時？」

  良

  「（腕時計を見て）11時」

  圭

  「（人通りを見て）相変わらず、うじゃうじゃいるね」

  良

  「何処に行く？」

  圭

  「どうしようか？」

  良

  「飲む？」

  圭

  「飲むのはもういい。ねぇ、ホテルに行かない？」

  良

  「マジかよ」

  圭

  「嫌？」

  良

  「（上目遣いに圭を見る）」

  圭

  「連れてって」

  良

  「マジ？」

  圭

  「一人じゃ泊めてくれないでしょう？」

  良、ぎこちなく頷く。

• 脇道（夜）

  ネオン街の明かりが、遠くに見える。

  圭

  「いくつ？」

  良

  「20」

  圭

  「年相応ね」

  良

  「いくつ？」

  圭

  「同じ」

  良

  「20」

  圭

  「そう」

  ホテルのネオン看板の前。

  良、立ち止まる。

  圭

  「どうしたの？」

  良

  「え、うん」

  良と圭、ホテルに入っていく。

• ホテル・部屋（夜）

  ベットに腰掛ける良と圭。

  圭

  「脱がして」

  良

  「あぁ」

  手が震えている。

  圭の上着を脱がす。

  圭

  「どうしたの？」

  良

  「（手を止め）俺・・・」

  圭

  「もしかして初めて？」

  良、恥ずかしげに顔を赤らめ、頷く。

  圭

  「そう」

  俯く。

  良、戸惑う。

  圭

  「ブラジャー、外して」

  後ろを向く。

  良

  「？・・・あぁ」

  ブラジャーのホックを外す。

  圭、胸に手を当て、振り返る。

  良、微笑む。

  圭、微笑み返し、ブラジャーをベットに置く。

  圭

  「今度は私ね」

  良の上着を脱がす。

  ズボンに手をかける。

  良のが、勃起している。

  圭、落ち着こうとしながら、ズボンのファスナーを下ろす。

  良、圭を抱きしめ、キスをし、倒れ込む。

  圭

  「靴下」

  良

  「あぁ」

  二人、寝転がり、靴下を脱ぐ。

  良、起きあがり、電気を消す。

  月明かりが入ってくる。

  良、ベットに戻り、圭を抱こうとする。

  圭

  「あ、月明かり」

  起きあがり、窓辺に立つ。

  良、圭を抱きそこね、こける。

  圭

  「来て」

  良、起きあがり、窓辺に立つ。

  圭

  「満月」

  良

  「うん」

  圭を抱き、キスをする。

  二人、全裸となり、ベットに倒れ込む。

  　−−−−−−−−−−−−

  窓辺に全裸の良。

  シャワーの音。

  良

  「薄野で月見か」

  振り返る。

  ベットのシーツに赤い血。

  浴室から、圭が出て来る。

  圭

  「何か言った？」

  良、首を振る。

• 月

  カメラが引くと、ススキの野。

  風で、ススキ同志が絡み合う。

• ホテル・部屋（朝）

  良と圭、眠っている。

  床に手帳がふたつ落ちている。

  「岡田良 22歳 ××大学」

  「川崎圭 18歳 ○○高校」

• 薄野（朝）

  ネオンも消えている。

  良と圭、ドーナツを食べながら、歩いてくる。

  地下鉄入り口の前で立ち止まる。

  圭

  「じゃね」

  良

  「また逢えるかな？」

  圭

  「じゃ」

  圭、階段を降りていく。

  良、首を傾げ、大きくあくびをする。

• ススキの野（朝）

  風が吹き、揺れ動くススキ。

  おわり