……

夢の中…なんだろうか。
未だに自分の周りの風景は白い。

「このまま逝っても、悪くないかな……」

白い世界を見ながら、思う。
大切な人を守るために振るうつもりだった、力。
しかし、それはことごとく阻まれ、大切な人は失われ…。
自分の力のなさに絶望する。
身体だけじゃない。
自分自身の、心の弱さだ。

「……?」

目が、慣れてきた。
しかし……その白い中に見えたのは、見覚えのある景色。
現実にはない、景色……。

「ラインハルト…タウン……」

SUNNY-MOONの最初の町、ラインハルトタウンが、そこにあった。




SUNNY-MOON

第2話 Meeting Again



 ラインハルトタウン。
名前こそ”タウン“だが、人は少ない。
この町は小さいにもかかわらず、巨大都市のひとつ、”ラインハルトポリス”に直結しており、また、管轄もラインハルトポリスに一任されている。

「ゲーム中の設定だと、ラインハルトポリスの王の息子がここの娘たちに酷いことをしてるんだったよな……」

優太は既に、ここがゲームの中だということを、受け入れていた。
それは、今まで見つけられなかった希望。

(ここでなら、人を守るために力を振るえるかもしれない。)

優太は町の中を進む……。



 「おい、女! 俺と一緒にこい!」

(早速始まってるな。)

そう、ゲーム中のイベントだ。

ゲームでは、ここでバグが起きて止まる。
だが、というか、やはり、というか……話は止まらない。

「!? そ……そんなこと、いきなり言われても、嫌です!」
「ほぉ……俺に逆らうのか。 なら、おとなしくしてもらうしかないな」

この王子は、いつもこの手で町の娘を連れていっていた。

「“[電]激痛撃(スタンニングペイン)”!」

バチィッ!!




 この世界には、魔法のような、“能力”が存在する。
手の甲に最大4つまで紋章を刻み、それに対応した能力が使用出来る。
それぞれにはレベルが存在し、まずはLv.1の能力しか使えない。
レベルは5段階。
能力は、契約によって使用できるようになるが、この町では契約する場所をこの王子が封鎖しており、能力者は王族だけだ。



「!? きゃああああっ!!」

この“[電]激痛撃(スタンニングペイン)”は文字通り、激痛を与える能力である。
ダメージはないが、あまりの痛みに気を失うものもいるほどだ。
そしてこの痛みは、本能レベルでの恐怖に値する。
この能力を受けるぐらいなら、他のことを受けて、屈服する……たいていの人はそうなってしまうのだ。

「なかなかいい声だな。 ……どうだ? 来る気になっただろう?」

今まで抵抗した人間は誰一人いない。
それは、これがゲームで、そういう風に答えるシステムだったから、ではない。
この激痛は本物……そして、その痛みに皆が屈服していたのだ。
……だが、この少女の意思の強さは尋常ではなかった。

「ぅ……ぃゃ…です……」
「!?」

辺りを取り巻いている町の人からも驚きの声が上がる。
今までそう答えた人間はいなかったのだ。
無理もない。

「ぐぅぅぅ……腕ずくでも連れて……」
「はああああああっ!!」

バキィッ!! ドォォォン!!


怒りをあらわにしたはずの王子は、次の瞬間10数メートル先まで吹き飛ばされていた。
全力疾走した優太の攻撃だった。



 優太の家族が宇宙人にさらわれたことがある、という話。
それは本当の話で、そのときされた改造は、しっかりと息子の優太にも受け継がれていた。
外見は変わらないが、異常なまでの身体能力。
本気を出せば、100Mを3秒台で駆け抜け、その握力はボーリングのボールにヒビを入れ、ついには粉々に砕く。
世間体の都合から今まで能力を抑えてはいたが、ついに本気で攻撃した。
自分がいじめられてきたこともあって、他人であろうとも、理不尽な理由で責められるのは許せなかったのだ。



「……大丈夫か?」
「ぁ……はぃ……だいじょう……!?」

少女の目が見開いた。
まるで、ずっと探していたものを見つけたような、嬉しそうな顔。
そして、呟く。

「……優太、さん……」
「!?!?」

その声に確信する。
この声の主…彼女こそ、ずっと探していた人。
自分が剣術を鍛え、力を得るに至った理由。
何よりも、大切な人。

「……彩音……っ!」

再会。
確かに、こんなところにいたのでは見つけられない。
これはまさに…奇跡…。

「ずっと……忘れなかった……」

抱きしめる、力強い腕。
彩音は、何の抵抗もなく、それに身をゆだねる。

「優太、さ……ん……」

2人は、1年ぶりの再会に、長く、長く、抱き合っていた……。






SoU「どうも、執筆者のSoUです。 第2話…やっぱり、話は早く進めちゃだめですね」

優太「♪」

SoU「嬉しそうだな。 まったく、あんまり可愛そうだから、さっさと再会させちゃったじゃないか……」

彩音「優太さん♪(ぎゅっ」←抱きつく

優太「彩音♪(ぎゅっ」

SoU「……話にならんな」


次回予告

 俺の力を見込んで、解放を望む町の人々。

優太「やるしか、ないのか……」

遊びではない冒険に、彩音を巻き込むことを恐れる俺。
彩音を守りたい…ずっと側にいたい……でも……。


第3話 One step to the future


彩音「私は……何があっても、もう離れません!」