「……彩音を、巻き込みたくないんだけどな…」

優太は、一人悩んでいた。
先ほど町の人に言われた言葉。

“その力で…町を、開放してもらえませんか?”

これは間違いなくイベントだ。
今まで進めなかったストーリーが、ついに進めるのだ。
気になる。
そしてなにより……

「これが……帰る可能性のある、唯一の方法なんだよな」

彩音を見つけた今、一刻も早く元の世界に戻りたい。
だが、その方法は恐らく……このゲームをクリアする以外にない。

「やるしか、ないのか……」

気持ちは、揺らぐ…。




SUNNY-MOON

第3話 One step of the future



 「2人とも、遊びに行っておいで。 久しぶりに会ったんだろうし、つもる話もあるんだろう?」

先ほどの王子は未だにのびている。
あの威力は尋常ではない。
生きているだけでも奇跡というものだ。

「彩音ちゃんもやっぱり女の子だねぇ。 数多の男の誘いを断ってたのは、こう言うことだったのかい?」

にやけるおばさんの言葉に、彩音は真っ赤になった。

「な、な、な、何言ってるんですかぁ! もぉ……」

慌てふためく彩音に、町の皆が笑った。

(ここになじんでる……それぐらい、長い間いたんだもんな……。)

溜息を、1つ。
泣きそうになる自分を抑えつつ、優太は手を差し出す。

「……いいか?」
「ぁ……はい♪」

その手を取り、2人は町の中へと繰り出した、





 「ここが、武器屋です……って、もう獲物、持ってるんでしたね?」

ここについたとき、なぜか持っていた刀。
まるで、ここでは刀を振るうのが当たり前……そう言わんばかりに。

「持ってきたつもりはないんだけどな」

優太の苦笑い。
それを見て、本当に幸せそうな笑顔を返す。

「……よく、私のことを覚えててくれましたね?」

意地悪な笑み。
思わずドキッとする。

(こいつ、こんなに大人っぽかったか?)

この1年の間、どれだけ苦労したのだろか。
それを思うと自分が不甲斐ない。





 彩音は髪が背中の真ん中辺りまでと結構長く、全体的に細め。
髪型は、編んだりゴムで結んだりするが、基本的にはおろしている。
おとなしめの性格だが芯は強く、精神力は特筆に価する。
外見は、まさしく少女。
子供っぽさが前面に見える中、時折見せる大人っぽさが魅力。
人気がある、などの自覚がない分、飾らない。





 「忘れたことなんか、一度もないぞ」

なでなで……

「わ……♪」

すごく嬉しそうに目を細める。

(ねこみたいなのは相変わらず、か)

再び訪れた2人の時間。
出来ることなら手放したくない。
が……2人が元の世界に戻るには、このゲームをクリアする以外に道はない。

「……優太さん、悩んでいるでしょう?」
「!?」

そして、鋭い。
ちょっとした雰囲気の違いからもすぐわかってしまうのだ。
それは、相手をよく見ているから。

「どんなことで悩んでるのかはわからないですけど……でも、これだけは言えます」

そう言って正面で優太を見る。
優太を見つめるその眼は真剣で、強い決意を持っていた。

「私は……何があっても、もう離れません!」

その言葉に、ふぅ、とため息をひとつ。

(俺は……なんで悩んでたんだろうな。)

そう、考える必要などなかったのだ。
どうするかは、彩音に聞けばよかったのだ。

「……わかった。 じゃあ……いくか、彩音」
「はい♪」

こうして、2人の戦いは始まったのだった。






SoU「どうも、執筆者のSoUです。 ついに物語が進むようです」

彩音「私は別に、優太さんと一緒なら……ここにいてもいいんですけど……(真っ赤」

SoU「……ご馳走様。 さて、これからが大変だぞ?」

彩音「わかってますよぉ。 でも、力を合わせれば大丈夫です、絶対♪」

SoU「その楽観的思考が、案外未来を切り開くのかもしれないな。 ……というわけで、また次回〜♪」


次回予告

 決戦は明日。
この世界の装備品を借りた俺は、単身町と帝都を結ぶ関門破りに挑む。

優太「手加減なんて出来ないぜ、覚悟しな!」

次々と難関を突破し、帝都も目前となった優太に、強敵が立ちふさがる。
能力のない優太にとって、それは圧倒的な強さだった。


第4話 Rival


???「すみません、ここは通せません……私の、命に代えても」