王たちを捕らえたあと、6人は国民たちの宴に呼ばれ、楽しいひとときを過ごしていた。

「っとっとっと、兄ちゃん飲みな飲みな!」
「お、俺未成年なんだけど……」
「彩音ちゃんもね」
「あ、はい」

トクトクトク……

注がれる酒、たくさんの陽気な人たち。
その雰囲気に、水羽たち3人も頬を緩ませる。

「英雄、なんてなる気はないけど……ならないと戻れないのも事実なんだよね……」
「そうですわね……私は英雄なんて、柄じゃありませんわ」
「……由依子は確かに柄じゃないな」
「……兄様、どう言う意味ですの?」

由依子の言葉に、みんなが笑った。



SUNNY-MOON

第8話 Prince



 その日の夜……ルミナスを残し、全員が眠りについていた。

「……父上や弟にこのようなことを……許されるわけもないか」

自嘲気味に、持っていた酒を一杯。

「ぇ……ルミナスさんってお城の方だったんですか?」
「!?」

女性の声……聞き覚えがある。
優太の彼女で、確か……

「アヤネ、さん?」
「ぁ、はい。 ……すみません、驚かせちゃいました?」
「いえ、かまいませんよ」

それを聞いて、彩音は隣に座る。

「……ルミナスさんは、すごいです。 ……みんなのためにとは言っても、私には多分、そこまでできません」

歳相応らしからぬ、大人の女性の笑み。
その表情に、ルミナスも思わず心を奪われる。

「わ、私は別に……ただ、王族であることが、嫌だったのです。 私は私でありたかった。 ……王族は、自分を殺さなければいけません。 自分を殺せなかった場合……今回の父上たちのような暴政になってしまいます」
「自分の思ったとおりに……なんて、できないですよね……」
「ええ。 だから私は王族であることを辞め、一兵士としてあの関所を守っていたのですが……」

そう。
人が聞けばただの我侭かもしれない言葉。
しかし、自分が自分であることができないという苦痛を、彩音は知らないわけではなかった。

「やっぱり、すごいです。 自分が自分である為に……その当時の自分を、捨てたんですから」
「!?」

(この人は……!)

ルミナスも、彩音が同じような苦労を知っていることを理解した。
今の自分は騎士だ。
たとえ、彼氏がいようと、誰の妻であろうと、彼には関係なかった。

「……アヤネさん」
「はい?」

思っていた言葉が口をつく。

「私はあなたに生涯仕えることを約束しましょう」
「!?」

身体の奥から火照るような感覚。
彩音の顔は一気に真っ赤になった。
今までこんなことを言われたことはない。
それも、王子様でしかも美形……これ以上いい男の条件はない。





ルミナスは実際王国屈指の美しい顔立ちをしていた。
普段は柔らかい表情を作る目。
凛々しく整った鼻、口。
金色の、美しい短目の髪。
華奢なように見えて筋肉質な身体。
背は180cmぐらいあるだろうか。
王国一の美形と言われるほどの男なのだ。





「え……ぁ、ぅ……」

真っ赤になった彩音は声を出すこともできない。
彩音はもともと男と話すのは得意ではない。
お酒の力でそれこそ普通に話してはいたが、こんな状況に対処できるほどではない。

「……今日はもう遅いです、休みましょう」
「ぁ、あ、は、はいっ……」

それで、精一杯だった。


 翌日……。

ゴウッ!

優太の掌から炎の玉が放たれた。
開放された能力契約の間で能力を習得したのだ。

「これが……能力……?」

自分がこの炎を操っている……少なくとも現実世界では不可能といわれることが、自分の手で行える。
優太も、そして彩音も喜びを隠せない。

「すごいですね、能力って……」

これなら、どこまでも進めるかもしれない。
自分たちの世界に戻る手がかりが、見つかるかもしれない。
こうして淡い期待に胸を膨らませるのだった……。






SoU「微妙に予告と違う……」

優太「順番、逆じゃん」

彩音「はぅ……(真っ赤」

ルミナス「そんなに赤くならなくても……」

SoU「彩音は純情みたいだからねぇ……(苦笑」

彩音「ぁぅ……」


次回予告

 ついに町を出た6人。
そして、モンスターと初めての戦い。

彩音「いきますっ!」

意気込みはするものの、見たことのない怪物相手に、5人は戸惑う。
だが、これを倒せなければ道はない……っ!


第9話 Monster


恭平「真剣にやらないと……死ぬ……?」