お風呂免許習得物語
<其の1>
この物語は、自分の未来を信じるある青年が、さまざまな挫折を味わいながらも、最 後には、理想を手にするまでを素人との1問1答形式でわかりやすくした歴史的読み 物である。

【み・尋ね人】
「あの、ちょっとお尋ねしますが、この辺りに銭湯はありませんか?」

【Q青年】
「ありますよ。そこのカドを右に曲がってすぐです。今時感心ですね。銭湯は日本の伝統です。」

【み・尋ね人】
「いやぁ、風呂のボイラーが壊れてしまったんで仕方なくですよ。
でもたまの銭湯も楽しみです。」

【Q青年】
「そうですね。風呂にはいろいろな入り方がありますからね。銭湯の入り方と内風呂の入り方は違いますからね。」

【み・尋ね人】
「そうなんですか?銭湯でマナーがあるのは判りますが、内風呂ではどんな入り方があるんですか?」

【Q青年】
「まず、風呂に長い間つかるの。熱すぎるのは駄目。ぬるめのお湯に、気が遠くなるまで浸る。 んで、我慢しきれなくなったら、風呂をあがって、即冷水を頭からかぶる。 もう、生きててよかった〜って感じ。」

【み・素人】
「とても正しい風呂の入り方ですね。もしかしたらお風呂の1級免状持ってるんですか? なんて言いましたっけ、お風呂なんたら1級。」

【Q青年】
「保健衛生省認定正調お風呂講座1級免状。
実はまだ2級なんです。 来月1級の試験を受けるつもり。筆記試験に実技試験もあるから大変です。 試験管の前で風呂入らなくちゃいけないんだから。」

【み・素人】
「あぁ。そのために毎日練習してるんですね。競争率高いんでしょう? 受かると良いですね。筆記は自信あるんですか?
実技試験で人前でお風呂に入るのはぶっつけ本番になっちゃうのかな?」

【Q青年】
「筆記も大変です。全日本風呂研究学会、会長自ら考案した問題を解かなきゃならない。 超難題です。普通の本屋には問題集とか売ってない。今までの風呂に対する全知識を結集しないと無理。」

【み・素人】
「勉強熱心ですね。尊敬します。お仕事しながら、資格取るための勉強もしてるなんて。 実技では当然、服の脱ぎ方から始まるんでしょ?全国から強者が集まって来るんでしょうね。 1級合格者は、新聞に載るでしょうから、私、探しますからね。」

【Q青年】
「うん、応援ありがとう。日刊お風呂っていう新聞知ってますね?
お風呂系新聞でダントツの購買部数だから、当たり前か。
でも1級はここ数年、合格者が出てないほどの超難度なんです。
先日、最後の1級免状を持っていた田中ツネさん(86)が亡くなってしまい、 事実上1級を持っている人間はいなくなったんです。
でも、日刊お風呂を見ればわかると思うけど、実は俺、凄い注目されてるんですよ。 もしかしたら、合格できるんじゃないかってね。まぁとにかく頑張りますよ。」

【み・素人】
「うわぁ。私、凄い人と知り合っちゃたんだ。 あ・あの、これからもよろしく。合格したらサイン下さい。友人に自慢できる♪
でも、合格したら遠い人になってしまうんだろうなぁ。私なんて忘れられちゃうんだ。きっと。
恥ずかしい事にあんまりお風呂の事を知らなかったんです。明日、日刊風呂新聞契約します。 勉強して、あなたの話しについていける私になりたいです。」
(どきどき)

【Q青年】
「え!日刊お風呂を知らない?!!そんな、それは大変だよ!
早速、契約しなくちゃ!ここにアクセスして!
http://www.huro.com/~nikan-huro/
毎日このアドレスのサイトを見て励まされてるんだよ。」

【み・素人】
「あっ、羨ましい・・・。
話を聞いて、私も10級から取ってみようと思うんですけど、コツがあったら教えていただくわけには いかないですか?」

【Q青年】
「私も、自分の勉強があるので、そうそう人に教えれませんよ。」

【み・素人】
「そこをなんとか。お願いします。厳しい修行にも耐えてみます。」

【Q青年】
「ま、私の勉強の妨げにならない程度に。それに私の教えは厳しいですよ。ついて来れますか?」

【み・素人】
「はい。」

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