お風呂免許習得物語
<其の19>

【み弟子】
「いよいよ、これからお風呂講座1級試験開始ですね。参加者はQ名人と、田中泰蔵 (56)の2人のみの特別試験。たぶんどちらかを選ぶ試験ですよ。名人、私ドキドキ してます。」

【Q1級挑戦者】
「お前がドキドキしてどうする。今日は1級のみの試験で朝から夕方までだ。特別試 験でどんなことになるか判らないから、お前はこの待合室で待機しているように。」

【み弟子】
「はい。もちろんです。」

【Q1級挑戦者】
「それじゃ、時間だから行ってくる。」

【み弟子】
「はい。  行ってしまった。この間とは別人のように落ち着いてる。」

〜〜〜〜〜
【み弟子】
「もう、かれこれ12時間。試験、随分長引いてるなぁ。 ん?試験会場が何か騒が しくなっているぞ?救急車の音が近づいて来るし。
 すみません。何かあったんですか?  え? 倒れた?  誰が?  Q1級挑戦 者ですか?  誰が倒れたんですか!!!」
(涙声)

【Q1級挑戦者】
「おい、俺は大丈夫だ。俺が今、応急手当をした。多分田中泰蔵(56)は助かるだろ う。」

【み・弟子】
「あ・・。名人!無事だったんですね? 何があったんですか? 試験はどうなった んですか? いったいなんの騒ぎなんですか?」

【Q1級挑戦者】
「そう、いっぺんに聞くな。(笑) 試験はダメかもしれないが。」

【み・弟子】
「そんな・・・。あんなに完璧にマスターしてたのに。何をそんなにさわやかに笑っ ているんですか! 何があったんですか!」

【Q1級挑戦者】
「試験は過酷を極めた壮絶な物だった。どちらも優劣付けがたく素晴らしい戦いだっ た。それで最終試験問題に入った時に田中泰蔵(56)が倒れたんだ。」

【み・弟子】
「それで、何故、Q名人の試験がダメかもしれないんですか?」

(涙目うるうる)

【Q1級挑戦者】
「田中泰蔵(56)が倒れても、俺は試験を続行できるから、そのまま受けていれば当 然勝てただろう。しかし、そうはしなかったんだ。」

【み・弟子】
「何故!勝てたのに。」

【Q1級挑戦者】
「試験を放り投げて俺は田中泰蔵(56)の応急処置をしたんだよ。だから二人とも試 験を放棄したことになる。よって今回もたぶん合格者なしだろう。」

【み・弟子】
「そんな!あんなに頑張ったのに・・あんなに・・・。何故、試験放棄を・・。長年 の願いだったはずなのに。」

【Q1級挑戦者】
「俺は後悔してないよ。これでいいんだよ。さぁ、今日はもう帰ろう。腹が減った。 明日きっとお風呂協会からなんらかの連絡があるだろう。」


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