お風呂免許習得物語
<其の20>

翌日
電話の音。

【み・弟子】
「朝から何なんだろう・・。ふぁぁ〜。ねむ・・。はい。もしもし。そうですぅ。 Q宅です。え?あ、はい・・・。はい!分かりました!ありがとうございます! それでは。はい。後ほど。
わぁー。名人!名人!起きて起きて!寝てる場合じゃありません!入りますよ!」

【Q1級結果待ち】
「なんだぁ、朝からうるさいヤツだ。俺はまだ寝たい。どうだたまには一緒に・・ ・。」

【み・弟子】
「何馬鹿な事を言ってるんですか!お風呂協会から今電話があったんですよ!」

【Q1級結果待ち】
「ふふん。どうせ今回は見送りだって言うんだろう。あぁあぁ、まきさんがどんどん 遠のいてしまうぅ。
この際しょうがないからコイツで我慢するか・・。」

【み弟子】
「名人!これから授賞式です!1級に合格したんですよ!あっ。また電話だ。」

【Q1級合格者】
「俺が出る!はい。Qです。あっ。まきさん。はい。えっ?いやぁ。はい。ありがと うございます。はい。それでは。のちほど・・。あぁぁ、ま・き・さ・ん。」
(でれ でれ)

〜〜〜授賞式会場〜〜〜
【み・弟子】
「授賞式は華やかだなぁ。いろいろな人がいる。名人はちゃんと挨拶できるだろう か。これだけの人が名人のために集まったんだなぁ。権威のある賞なんだなぁ。
あっ、名人が壇上にあがるぞ。変なことを口走りませんように。」

【Q1級合格者】
「このたびは、私の1級合格を祝い、これほど多くの人に讃えられて幸せです。
この 受賞は私ひとりの力ではありません。すでに故人となられた私の師匠なくてはありえ ないのです。
実は、最終試験最中にライバルの田中泰蔵(56)さんが私の師匠と同じ 症状で倒れました。私は、試験を投げだし応急処置を行いました。 この応急処置の神髄を私に教えてくれたのが、修行中の宿の御主人です。その時の相 手は熊でした。」

【み・弟子】
「あっちゃ〜。熊が出て来ちゃったよ。大丈夫かなぁ。あぁ、授賞式っていうのはワ インがでるのね。ズズッおいしい・・えへへ。もっと。」

【Q1級合格者】
「修行中に”天の下では万物が平等である。”と悟りました。私はそれまで心の何処 かに思い上がりがあったように思います。
宿の御主人の熊に対する適切な応急処置。その魂を、昔、我が師匠が倒れた時に会得 していれば今、ここで師匠に壇上で祝って貰えてたかもしれません。
幸い、ライバル田中泰蔵(56)さんは、快方に向かっているという事です。
私は、実に多くの人に支えられて今回の受賞があったと思っています。
私ひとりの1級ではありません。 師匠、ライバル田中泰蔵(56)さん、宿の主人、熊・・・」

【み・弟子】
「うっひゃぁ。やっぱりくまがでてきちゃったよよよよ。あれれれ?ちょっとろれつ がまわらなくぅ。れれれれれ。」

【Q1級合格者】
「会長のお孫さんのまきさん・・。など、ほんとに実に多くの人に支えられて今日が あります。」
(やった。うひひひ、演説の中でまきさんの名前を入れることに成功し たぞ。あっ、まきさんが俺を見てる。あれは、尊敬の眼差し・・。やっぱ、かわいい なぁ。ま・き・さ・ん。)

【み・弟子】
「あのぅ。このわいんのおかわりありますかぁ。はい。どうも。うふふふっ。おいし い。あら。すこしまわりがゆがんでみえるぅ。名人のえんぜつがそろそろおわる な。」

【Q1級合格者】
「ほんとうに本日はありがとうございました。」

〜〜〜〜〜〜
【み・弟子】
「めいじん。すばらしいえんぜつでした。しかし、いくら熊がすきでも、壇上でくま ・・」

【Q1級合格者】
「なんだ、お前、酔っぱらっているのか。あ、まきさん。でへへへへへ。はい。いえ そんな。でへへへへへ。」

【み・弟子】
「あぁ。こんにちは。まきさん。だめですよぉ。めいじんはすきなひとがいるんで す。いえ、せいかくにいうと、ひとではないんですがね。あのねぇ、おしえちゃいま す。くまなんですよ。それが、くま。」

【Q1級合格者】
「この、くそ馬鹿。酔っ払い。あ、待って。まきさーん。」

【み・弟子】
「にんげんにしときなさいってわたしが、ずいぶん、いったのにぃ。ひっく。」

【Q1級合格者】
「はいはい。すみません。こいつ酔っ払って。でへへへ。まきさん。」

【み・弟子】
「めいじん。くまから、まきさんにのりかえるんですかぁ?」

【Q1級合格者】
「まきさん。授賞式が退けたらデート・・。え?okですか。やったぁ。」

【み・弟子】
「よかったね。めいじん。」


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